【鉄道こぼれ話】遺失物のゆくえ

かさ RAILWAY
落し物があなたの手元に戻るまで・・・

はいどうも、鉄道員カリブです。

今日は落し物=遺失物について語りたいと思います。

  • 鉄道会社を悩ませる遺失物の現実
  • 遺失物が落とし主の手元に戻るまで
  • 遺失物の拾い主が落とし主に請求できることとは?
  • 鉄道事業者と警察署の関係
  • 鉄道員が語る遺失物にまつわるグチとは?

などなどをお伝えしていきたいと思います!

鉄道会社を悩ませる遺失物

落し物の総数がエグい!

みなさんは鉄道会社が1日に取り扱う遺失物の件数ってどれぐらいだと思いますか?

例えば、JR東日本では1年間で220万件もあるそうです。
一日当たり約6,000件!多すぎますね。
営業キロは7400キロ・平均利用者が1660万人/日です。

関西では私鉄の阪急電車で23万件。1日あたりは600件。
営業キロが143.6キロ・平均利用者が177万人/日です。

このことから、ざっくり見積もると一日の利用者2800人~3000人に対して1件くらいの遺失物がある感じですね。

遺失物が駅を悩ませる原因とは

ズバリ保管スペースの圧迫ですね。
しかもお金にならない!

市街地にある駅には一日に何件もの遺失物が届きます。小さな規模の駅でも一日数件~十数件の落し物が届き、大規模な駅だと数十件以上が届きます。

落し物と言えども、誰かの財産を預かっているわけですから、捨てるわけにも行きません。
法律上は拾得日から7日以内に警察署へ届け出たあと、カサや衣類など安価なものは駅で、それ以外は警察署で3ヶ月間は保管する必要があります。

保管場所にも限りがあるわけで、しかもお金になりません。むしろ倉庫を揃えたり、管理にも人的コストがかかっています。

特に傘が厄介です

鉄道会社で発生する遺失物のうち、約2割はカサが占めます。しかもその返還率は低く、落とし主に戻る割合は約20%です。
残りの80%のカサは3ヶ月間駅の倉庫に眠り続けるわけです。

カサって折りたたみ以外は長さもあってかさばるし、濡れていたら保管前に乾かす必要があるし、本当に厄介なんですよね。
しかも3ヵ月後に処分するにしてもコストがかかる…

コンビニでビニール傘が売れ続けているのにはワケがあります。「失くしたらまた買えばいいや」と思わせる値段で売っているからですね。
いやいや、失くさないで下さいよ!本当に(泣)。

遺失物法をざっくり解説

それではここから遺失物に関するルールを説明していきます。
落し物のゆくえはだいたい以下の通りですね。

  • 旅客または駅員が落し物を拾う
  • 駅員がすぐに遺失物としてシステムに登録を行う
  • 拾得から4日以内に集配駅(大きな駅)に送付する
  • 拾得から7日以内に所轄の警察署へ遺失物を届ける
  • 3ヶ月経っても落とし主が現れない場合は拾得者のものとなる
  • 駅員拾得&旅客拾得のうち権利主張(※)しないものは鉄道会社のものとなる

こんな感じですね。権利主張については後で説明します!

駅の落し物が警察署に行くまで

駅に届けられた遺失物は4日以内にいったん集約している駅に送られます。
その後、拾得日から7日以内に所轄の警察署に届けられます。

ちなみに、鉄道会社によっては警察署に届ける前にいったん集める駅が決まっていたりします。

JRの場合も、支社ごとに集約駅が決まっていたり、線区ごとに集約駅が決まっていたりとバラバラですね。
駅間の輸送にはだいたいトラック便が使われています。

大まかな遺失物の動きは

  • 1~7日間は駅や集約駅にて保管
  • その後カサなどを除いて一旦警察署へ全部届ける
  • カサは駅の倉庫で2週間(会社によって違う)保管→廃棄
  • 3ヵ月後も持ち主が現れない物を駅が警察へ取りにいく
  • 現金・有価証券類は会社の収入へ、それ以外は廃棄か売却
  • 権利主張された物は拾得者に連絡が行く→取りに来てもらう

こんな感じになります。

権利主張とは何か?

旅客が駅や電車内で落し物を拾ったら、駅員に届けますよね?
実はその時に拾い主は3種類の権利主張ができます。

  • 報労金の主張
  • 所有権を取得する主張
  • 上記の両方を主張

報労金とは、落とし主が現れた場合に落とし主から拾い主に対して支払われるべき「お礼のお金」です。
具体的には落し物を時価に換算して2.5%~10%の現金です。

この場合は当事者間での話し合いによって金額を決めてもらいます。駅で拾った場合は鉄道会社側にも半分権利がありますが、ほとんどの鉄道会社はその権利を放棄しています。

くれぐれも、報労金の請求に関してモメたとしても駅に文句は言わないで下さいね!

所有権の主張とは、3ヶ月経っても落とし主が現れない場合にその遺失物を自分のものにできる権利です。
貴金属や宝石類だと価値がありますからね・・・

ただし、個人情報の入った遺失物は自分のものにすることはできません。ノートPCやスマートフォン、USBメモリなどがそうですね。

これらの主張をしたいのであれば、必ず駅員に渡す時に申告してください。サイフなど金目のものの場合にはこちらから確認をしますが、ほとんどの場合「どうもありがとうございました~」で終わってしまいます。

権利主張をした場合には、駅員が提示する所定の用紙に氏名や連絡先を記入してもらう必要がありますのでご協力くださいね。
後々落とし主や警察署から連絡するためです。

バッグならバッグの中身を・サイフなら中の金額を駅員と拾い主とで相互に確認する必要もあるので、少々時間がかかることをご了承ください。

ちなみに個人が拾った落し物は、拾得後24時間以内に施設占有者(=駅の場合は駅員)か交番に届け出なかった場合、上記の権利を喪失してしまいます(=権利喪失)のでご注意を!

施設占有者とは何か?

「施設占有者」とは、駅や車内の場合は鉄道会社となります。これが図書館だったら市町村だし、家電量販店なら「ヤマダ電機」とか「ケーズデンキ」となるわけですね。

駅の構内(施設内)で拾った遺失物は、駅の(施設の)駅員(占有者)へと届け出る義務があり、本来はその遺失物に関する権利は拾得者と施設占有者とで半分ずつとなります。

施設占有者は個人とは違って、落し物を7日間まで(事前に警察署と打ち合わせた場合は14日まで)保管することができます。この間に落とし主が現れた場合は警察署へ提出することなく、落とし主へと返還できるんですね。

落し物が見つかるまでの流れ

鉄道施設内で落とした忘れ物を捜して→見つかって→手元に届くまでの流れを簡単に説明します。

落し物をした直後に申告した場合

  • 落し物をした心当たりのある場所を聞く
  • 駅ならその駅に連絡をして、駅員に見に行ってもらう
  • 車内なら列車と乗車位置を特定して、他の駅で車内捜索を行う
  • 見つかったらその駅まで取りに行ってもらう

こんな流れです。

車内の場合は停車時間に余裕のある駅に車内捜索を依頼します。
途中駅で拾われている可能性もあるので、途中駅にも並行して当該の落し物が無かったかを問い合わせることが多いですね。

見つかった駅までの電車賃は自己負担となります。
当日取りに行けない場合は、日時を指定した上で後日取りに行くこともできます。

見つかった駅が遠方で運賃が高額な場合などは、指定した住所へ着払いで送ることもできます。
その場合は発送から到着まで数日かかるのでご了承ください。

「どこに落としたか分からない」
「どこに乗っていたか分からない」
こんな場合はちょっと困りますね~。
駅側だって一つの遺失物をシラミ潰しに探すことはできません。
誰かが見つけて遺失物として登録されるまで待つしかないのが現実ですね。

当日以外に申告した場合

  • (前提として)届けられた遺失物は全て・即座に遺失物システムに登録されている
  • 申告のあった遺失物の特徴や、落とした日時・場所をうかがう
  • 駅員やオペレーター(電話の場合)が遺失物システムで検索する
  • 条件に一致した遺失物がヒットすればお伝えする
  • 駅または警察署に取りに行ってもらう

後日になって申告があった場合にはこのパターンになりますね。できるだけ詳細な情報を提供した方が、ヒットしやすくなります。

逆に「青いカサ」とか「黒い帽子」とかだと無限にヒットするので、絞り込みするのが大変なんです。
名前入りの落し物だと間違いないです。持ち物に名前を入れておくと確実に返還率は上がりますね!

ちなみに、定期券が入った落し物の場合は発売情報から連絡先を調べることができるため、届出のあった駅からお客様へ連絡を入れることが多いです。

最近は鉄道会社側も非通知設定で連絡を入れるため、着信拒否される確率が高いですね~。
「定期の入ったパスケース・サイフを落とした!」と気付いたら、しばらく非通知設定の電話を取るようにしてください。案外すぐに連絡が来るかもしれませんよ?

見つかった落し物の返還方法

駅で保管している遺失物を、その駅まで行って受け取る場合は、身分証があれば大丈夫です。
必要書類に住所・氏名・連絡先の記入と、捺印またはサインするだけで受け取れます。

遠方の駅に保管されている遺失物を自宅へと着払いで送ってもらう場合には、同じ鉄道会社の最寄り駅へ申し出る必要があります。おそらくコールセンターでは取り次げないはずです。
この場合も身分証が必要になります。

本人または家族以外を代理人として受け取りに行きたい場合は、委任状が必要となります。鉄道会社によってフォーマットは違いますが、JR東日本の場合はこんな感じです。どこの鉄道会社でも大きく変わらないと思います。

遺失物こぼれ話

最後にちょっとした遺失物に関する豆知識と、カリブの遺失物に対するボヤキを聞いてもらおうと思います。

  • スマホはロック画面に連絡先を表示させろ!
  • 駅員は着信があっても絶対に取らないぞ!(個人情報保護のため)
  • 常に身分証を携帯しといてくれ!持ってないと返却したくても出直してもらうことになる
  • 道端(敷地外)で拾った物を駅に届けないでくれ!交番に持っていって。
  • 遺骨などの遺失物は3ヵ月経っても警察署預かりになります
  • 生ものの遺失物(野菜とか弁当)は夜に廃棄します。腐っちゃうので。
  • 弁当箱の場合は中身を捨てます
  • 賞味期限のあるおみやげ類も期限が来たら捨てます
  • 3大探しづらい場所「シートの隙間」「エスカレーター・エレベーターの隙間」「線路内」→かなり時間がかかります
  • GPSサービスで見たら車庫の中にスマホが!→かなり時間がかかります
  • 網棚の上に置いたままの遺失物は回収率が高い。それ以外は他のお客様が駅員に届け出る確率が高い。
  • 終着駅(折り返し駅)や乗換駅の落し物の量がヤバい
  • 午前中雨→午後から晴れの日はカサの忘れ物が急上昇
  • サイフを落としたら隅々まで調べられます。名前や連絡先が分かるものを探しますので。

カリブも実践していますが、スマホのロック画面に自宅の電話番号などを表示させましょう。万一落としたときに自宅へ連絡が入るはずです。
駅員はスマホや携帯に受電があっても、絶対に出ません。個人情報保護の観点から、そう指導されているからです。

お弁当箱は夜になったら中身を捨てて、ちゃんとした駅なら洗ってから保管します。中身が腐っちゃったら駅の中が臭くなるし、落とし主もそんな弁当箱使いたくなくなるでしょ?
お互いのためにそうやってます。

車庫、座席やエレベーターのスキマ、線路内はその性質上すぐには調べられません。安全面と人員が確保できてからの捜索となるのでガマンしてね!

最後に

さて、ここまで長々と駅や車内での落し物について語ってきましたが、カリブが皆さんにお伝えしたいのは・・・

大切なものは手放さずに持ち歩きましょう。失くしたと思ったらすぐに駅員に伝えてください。
我々も遺失物を持ち主に返すために最善を尽くします。

拾い主から見れば、自分が拾ったもの(=自分の財産になるかもしれないもの)を駅に託しています。いくら落とし主だろうと「どこの誰が、いつ取りに来たのか」を記録しておく必要があります。
引取りの際に署名や捺印を求められても、応じて下さいね。

どんなに大切なものでも、あなたの手元を離れてしまうと、いったん所有権が失われて(占有離脱物となって)しまいます。そうすると拾得者に権利が発生するんですね。
お互いの手間を省くためにも、大切なものは手放さないで下さい。

もちろん、落し物を拾った場合もすぐに駅員へ申し出てください。あなたの善意に感謝しつつ、落とし主へと届くように対応します。
もし権利を主張されたい場合は、その旨も同時に申告して下さいね。

長くなりましたが、そういうことです。

落としたくて落し物をする人はいません。
もし目の前に落し物を見つけたら、持ち主に返せる確率を上げるためにも、ぜひ拾って駅員まで届けてくださいね!
あなたの善意を全力でサポートします!

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