【意外な事実】ホームと車内の非常ボタン

非常ボタン RAILWAY
押していいのだ

こんにちは、鉄道員(ぽっぽや)カリブです。
今回もまた鉄道シリーズですね。

皆さんはホームや車内に非常ボタンがあることをご存知でしょうか?
存在は知っていても、どこにあるのか?押したらどうなるのか?あまり知られていないと思います。

今日はそんな非常ボタンを「どんなときに押せばいいのか?」や、「押すべきタイミングはあるのか?」などを中心に、駅係員目線から説明しようと思います。

ホームの非常ボタンについて

JR西日本のホームページより

機能の説明

  • 駅のホームに2~30メートルおきに設置されている
  • 押すとホームの「非常報知灯」が点滅する
  • 報知灯を見た運転士が非常ブレーキで停止する
  • 「非常報知灯」はホームの入り口・途中・出口など至るところにある
  • 駅事務室内にもアラームが鳴って「どのホームで押されたか」が分かる

大まかな機能はこんな感じですね。
ほとんどの場合、非常ボタンは駅のホームの柱に設置されています。
非常ボタンが設置されている柱の頭上には、そこにボタンがあることを分かりやすくするために看板が付いている場合が多いです。

上が非常報知灯、下が柱に掲出される看板

このボタンが押されると、ブザーが鳴り、非常報知灯が点滅します。
これを見た運転士が非常ブレーキを引いて列車が止まるわけですね。

到着場面・発車場面を想定して、ホームの入り口だけでなく中央付近や出口付近、見通しの悪い駅の場合は駅の手前にも設置されています。

そして駅事務室内にはこの非常ボタンに連動した監視盤があります。
ブザーが鳴動して非常ボタンが押された事を知らせ、表示灯が点灯してどの番線で押されているかが分かるようになっています。

「W」の文字が表示されたホーム非常ボタンの例

ちなみに、ボタンの左上に「W」の表示がある場合は、当該ホームだけでなく隣接するホームの非常報知灯も連動して点滅します。
これは反対側のホームから異常を目撃した場合でも、そのホームの非常ボタンを押せば列車を止めることができます。

どんなときに押せばいい?

  • 線路内に人が転落したのを見た場合
  • キャリーバッグなど大きな荷物が線路内に落ちた場合
  • 運悪く線路の真上に貴重品が落ちた場合
  • ホーム端で急病人が発生、列車にぶつかりそうな場合
  • 子供の手やベビーカーの一部がドアにはさまれたまま列車が動き出した場合

このような場合には迷わず押してください。
列車が緊急停止し、車掌や駅係員が現地に急行します。

ボタンの上部にあるパトライト

実は非常ボタンの上部にはパトライトが付いていて、押されたボタンの真上だけ点滅するようになっています。
駅係員はそこをめがけて走ってくるわけですね。

その後、押された理由が一目で分かれば、急病人の救護や落し物の拾得作業・挟まれが発生しているドアの開閉作業をします。

ボタンが押された理由が分からない場合は、付近の目撃者に事情を伺ったり、本人が居れば本人から事情を伺います。

最終的に安全な状態が確認できれば、非常ボタンを復帰扱い(OFFにする)することで列車の運転が再開します。

カリブの体験談として、線路の真上にモバイルWi-Fiのルーターが落ちてしまって非常ボタンを押されたことがありました。
もしそのまま列車が進入していたらルーターはコナゴナ…やむを得ずボタンを押したんでしょうね。もし自分が同じところにスマホを落としたとしてもたぶん押します。

また、架線(線路の真上にある電線)にアルミの風船が引っかかって押されたこともあります。
これも列車が進入してパンタグラフに接触すれば、最悪の場合はアークが発生して架線が溶断・停電する可能性があったので押してもらえてセーフでした。

ボタンを押すときの注意点

  • 非常ボタンを押さなくてよい場合

緊急時にはドンドン押して欲しいホーム非常ボタンですが、駅員目線で「押さなくても大丈夫な場合」をお伝えしておきます。

線路内に靴やスマホを落としたとしても、線路の直上でなければ押さなくても大丈夫です。
駅係員に申告すれば、マジックハンド的な道具で拾い上げることができます。

ベンチや待合室内での急病人発生も同様です。駅係員に申告すれば、担架や車イスを持って駆けつけます。

「列車とぶつかる危険性」がある場合のみ押して頂きたいです。
血だらけの人がフラフラ歩き回ってたら別ですけど。

ホームでお客様同士のトラブルを目撃した場合。
これも改札で駅員に申告して頂ければすぐに駆けつけますので、列車を止める必要は無いです。
が、自分が当事者で身の危険を感じた場合は押してください。周りの人が必ず駅員に申告するとは限らないですからね。

  • ボタンを押しても線路内に降りないで!

ホーム非常ボタンを押しても、列車が必ず止まるわけではありません。
あくまでも非常報知灯を見た運転士が、自分で非常ブレーキを引くだけです。

もしも報知灯の見落としや、ボタンを押すタイミングが遅くてブレーキが間に合わない場合には列車が進入してきます。

更に、もしホームの手前で停車できたとしても、運転士の判断で15km/h以下の速度で列車が入ってきます。

だからもしホーム非常ボタンを押したとしても、線路内には絶対に入らないで下さいね!
カリブと皆さんとのお約束です。

車内の非常ボタンについて

機能の説明

  • 車内の連結部ドア付近に設置されている
  • 押すと乗務員室のモニターに表示が出てアラームが鳴る
  • それを見た乗務員が列車を停止させる
  • 最近の車両だと車掌と通話ができる
  • 旧型の車両だと通話はできず、車掌がその車両まで来る
最近の車両はこんな感じ

このように、まずは列車が止まります。
そこから車掌が確認を行うわけですね。

ボタンの横にはマイクとスピーカーが付いていて、車内から車掌と通話ができます。
最近の車両でも、新幹線の場合はマイクが無く、当該の車両に車掌が向かいます。

発生した状況に応じて車掌から付近の駅や車両点検担当の社員、警察・消防に連絡を入れ、手配が完了してから運転が再開されます。

ほとんどの場合、列車が停止してから放送が入り、「車内の非常ボタンが取り扱われた旨」と「今から状況を確認する旨」が伝えられます。

そして運行を管理する指令所を介して近隣の駅などで引き継ぐ体制がとられた後、運転を再開します。

どんな時に押せばいい?

ここには書いてないけど、押したら電車は止まります。
  • 車内で急病人が発生した場合
  • 痴漢の被害に遭った、目撃した場合
  • 車内でお客様同士のトラブルが発生した場合
  • ドアに傘が挟まったまま発車した場合
  • 車内で異音や異臭・発煙に気付いた場合

こんな時にはすぐに非常ボタン(SOSと表記)を押してください。

急病人の場合は隣接駅に救急車を手配したり、チカンやトラブル発生の場合には警察に出動を要請します。
車両故障が疑われる場合には修理のための係員を最寄の駅に派遣します。

傘などが挟まっている場合はホームで待っているお客様に当たってしまうおそれがあるため、次の駅では速度を落として接近し、停車後に取り除き作業を行います。

過去にはホームと反対側のドアに荷物や上着のヒモが挟まった状態でお客様が降りられず、車内非常ボタンを押すパターンや、
車内にハチが入ってきてパニックになったお客様が車内非常ボタンを押すパターンもありました。

イメージとしては車内で発生した異常事態や緊急事態を車掌に知らせるために押す形ですね。
だから最後部車両に乗っている場合などは、車掌室のドアを叩いて直接伝えたほうが話が早かったりもします。

ボタンを押すときの注意点

こちらのボタンは、ホームの非常ボタンと違って「押されたら必ず止まる」ことがルール化されています。

このため急病人が発生した場合には、非常ボタンを押すことによってむしろタイムロスが発生する場合があります。

駅に停車中でしたらすぐに駅係員に引き継ぐことができるので、「急病人が発生した!救急車を呼ばなきゃ!」となった場合には一呼吸置いて、駅に着いてから非常ボタンを押したほうがいいでしょう。

しかし、次の停車駅まであと10分以上停まらない場合などには押しちゃって下さい。
その場合は通過駅でも臨時に停車させて駅員に引き継ぐこともできるので、救急搬送までの時間を短縮させることができます。

逆に、チカンなどの犯罪行為を目撃した場合には躊躇せずすぐに押してください。
駅間に停車させることで犯人の逃走を防ぎ、隣の駅に警察を手配させる時間を作ることができます。

あとは車内の床面に嘔吐物があるとか、座席の一部が汚れている場合なら、ボタンは押さずに降りた後に駅員に直接申告してください。
途中駅で清掃手配をかけますのでご安心を。

ちなみに車掌が列車を停止させる際には、トンネル内と橋梁の上を避けて(=通過してから)列車を停止させます。

これは車内で火災が発生した場合に煙が充満するのを防ぐためと、お客様を列車外に避難させることを想定しています。

トンネル内に列車を停めると煙で窒息死してしまいますし、橋梁上でお客様を降ろすと川や谷底に落下してしまう危険性があるからです。

まとめ

どちらの非常ボタンも、「危ない!」と感じたら迷わずに押してください。
両方とも列車を一旦停止させることができます。

正当な理由さえあれば、非常ボタンを押したからといって責められることはありません。
命を救うため、困っている人を助けるために勇気を持って押しましょう。

もし押した場合には、駆けつけた駅員や乗務員に対して状況を説明してあげてください。
こちらとしては感謝の気持ちしかありません。

列車の遅れよりも、お客様の安全のほうがずっと大事です。
押したことが無い人は、ぜひホームや車内の非常ボタンがどこにあるか探してみてください。

ただし、緊急時以外にみだりに非常ボタンを取り扱うと、法律により罰せられます。
(調べたところ、偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪などですね。)

このブログを読まれている方には居ないかとは思いますが、イタズラで非常ボタンを押すのはやめましょうね!

今日も車内で・ホームでお客様の安全を守っています

いかがでしたか?
非常ボタンの機能や目的を知れば、いざ押すときの動機付けになるかと思います。

JR各社では、駅構内で「非常ボタンキャンペーン」等と題して、実際に駅やホームの非常ボタンを押す体験コーナーを催す場合があります。

ぜひ見かけた際には遠慮せず押してみて下さいね。
あなたの一押しがきっと誰かを救います。

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