鉄道の信号機あれこれ

鉄道信号 RAILWAY
信号によって安全が守られている

みなさんこんにちは、いよいよ土地の頭金を支払ったカリブです。

今日は恒例の鉄道のお話をしていきたいと思います。
テーマは「信号機」です!

道路の交通信号と、鉄道の信号はその役割がまったく違います。
専門的な知識もできるだけ分かりやすく説明していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

※記事内の画像は特に注釈のない場合はWikipediaからの引用となります。

なぜ信号機が必要なのか?

そもそも、なぜ鉄道に信号機が必要なのでしょうか。
高速道路のように、交差点もなく一方向に進むだけなら信号は必要ないのでは?と思うかもしれません。

しかし、鉄道と自動車とでは大きな違いがいくつかあります。

  • 制動距離が長い(=急に止まれない)
  • 自力で進行方向を変えられない
  • 自動車に比べて事故発生時の被害が大きい
  • 時刻表(ダイヤ)通りに運転しなければならない

などが挙げられます。

時速100キロで走行中にブレーキをした場合、自動車なら112mで停止できるのに対し、鉄道列車では停止までにおよそ600mも必要となります。

トヨタのHPより。車は鉄道より軽いから停まりやすい。

目で見えてからブレーキを踏んでいたのでは間に合わないため、あらかじめ列車を減速させるための信号が必要になるんですね。

ホームがたくさんある駅などでは、決められた進路に入っていく必要がありますが、列車は進行方向を自力で変えられないため、線路が正しいルートへ出来上がっているかどうかを、信号によって確認しています。

また、万が一脱線や転覆といった事故が発生してしまうと、何百人という命が犠牲になってしまうおそれがあります。

自動車の信号無視は、運がよければ無事故で切り抜けられますが、鉄道の信号無視は「進行方向に別の列車が居る」場合や「制限速度の低いルートに向かってしまう」場合があり、悲惨な事故の引き金になってしまうことになります。

更に鉄道には列車運行に時刻表(ダイヤ)が存在します。
ダイヤどおりに運転(定時運行という)する必要があるため、信号機に青信号が出るタイミングもある程度決まっています。

とまぁこのように、鉄道の安全と定時性を守るために信号があるんですね。

ちなみに昔は駅の係員がでっかいレバーを引いて、物理的に信号機を動かしていたそうですが、現在は電気的に制御された信号機が使われています。

鉄道信号機の特徴

さて、それでは鉄道の信号機と交通信号機では何が違うんでしょうか?交通の信号は「青=進め・黄=停まれ(注意せよ)・赤=止まれ」ですが、鉄道の信号機は全くと言っていいほど違います。

交通信号機との違い

「青信号=進め」ではない

自動車を運転中、青信号で止まっていたら、後ろの車からクラクションを鳴らされちゃいますよね?
でも、鉄道の場合は「青信号=進め」ではありません。

青信号のことを「進行」と言い、その意味は「進んでもよい(制限速度無し)」なのです。
鉄道用語的には、赤信号(停止)以外は「進行を指示する信号」といいます。
だから、青信号が出ていても、必ず進まなければいけないわけじゃないんです。

もし始発駅を10時ちょうどに出発するダイヤだとして、信号機が9時58分に青になったとします。
このときにもし運転士が9時59分に発車してしまったら・・・?
もちろんお客様は乗り遅れるかもしれないし、運転士は処分の対象となってしまいます。

進んでもよいって・・・進まなくても許されるんですね。

赤・青・黄だけじゃない

これは後で詳しく説明しますが、鉄道信号機には「赤・青・黄」以外にいろんな表示があります。

たとえば白色だったり、青と黄の組み合わせだったりします。

車の信号は3種類だけ覚えればいいですが、鉄道の信号は種類が豊富で、カリブでも覚えきれないほどあります。
・・・いやまぁ覚えなきゃいけないんですけど。

現示(げんじ)と定位(ていい)

はい、ちょっと聞き慣れない単語が出てきました。

「現示」とは、「信号機が運転士に対して指し示している状態のこと」です。国語辞書には載っていません。鉄道用語ですね!

青信号が表示されている状態のことを「進行現示」といいます。言い換えるとその信号機には「進行信号が現示されている」とも言えますね。
ちょっと何言ってるか分からないかもしれませんが、まぁそういうことです。

「定位」はギリギリ国語辞書に載っています。「事・物の位置・姿勢などを定めること」とあります。

鉄道用語としては「その信号機は基本的にどの色を表示しているのか?」という意味です。

つまり「進行定位の信号機」であれば、「普段は青信号が出ている信号機」ということになります。
逆に「停止定位の信号機」であれば、「普段は赤信号が出ている信号機」ということですね。

例えば同じ駅に通過列車が多いホームと、通過待ちをする列車が停まるホームがあるとします。
その場合は、通過列車が通る側の信号機は「進行定位の信号機」であり、通過待ちの列車が入る側の信号機は「停止定位の信号機」であることが多いです。

色によって変わる制限速度

「速度を制限する信号機」に現示されるパターンにはいくつかあります。基本は「赤・黄・青」の組み合わせで表されます。

「高速進行」は路線が限定されているので割愛します。

いっぱいありますね~、カリブも覚えるのに苦労しました。
それぞれの制限速度は以下の通りです。

  • 「停止」:もちろん0キロ。進んではいけない!
  • 「警戒」:25キロ以下。一部線区では35キロ以下。
  • 「注意」:45キロ以下。一部線区では55キロ以下。
  • 「減速」:65キロ以下。一部線区では75キロ以下。
  • 「進行」:制限速度なし。ただしその路線内で定められた最高速度まで。

ここまで細かく分類されているのにはワケがあります。

最高速度が60キロとかの田舎の路線であれば「進行・注意・停止」だけで十分なんですが、都市部の線区だと最高速度が100キロだったりします。

100キロで走ってていきなり45キロに落とすのって怖いじゃないですか。だからあらかじめ減速信号で65キロ(または75キロ)に制限して、その次の信号機に注意信号を出しておけば安全に45キロまで落とすことができるんですね。

主信号機と従属信号機

う~ん、これを説明するとかなりマニアックになるんですが・・・

信号機にはメインとなる「主信号機」と、サブとなる「従属信号機」があります。

たとえば駅間にある「閉そく信号機」には、「中継信号機」というものが付属しています。

カーブなどで見通しが悪いところに信号機を建てている場合、いきなり注意信号が見えて急ブレーキ!とかになると危ないですよね。

そこで本体の信号機の手前に、本体と連動したサブとなる信号機(従属信号機)を建てておき、「この先の本体の信号機は青じゃない、黄だ!」と予告してくれるんですね。

制限とは、減速・注意・警戒のいずれかを表す。

これを見た運転士は「あぁ、次の信号機は注意現示なんだな」と分かるので、早めにブレーキを扱うことができるようになります

中継信号機の他にも、「遠方信号機」とか、「通過信号機」などの従属信号機がありますが、ちょっとマニアックすぎるのでこの辺で終わりにします。

【信号附属機】進路表示機

場内信号機に附属する表示機で、「現在、どの進路に向かってルートが出来上がっているか?」を表示する「進路表示機」があります。

2進路なら左右に一つずつ電球があり、どちらかが点灯します。
3進路だとL字型やT字型に電球が灯り、左・中・右を表します。
4進路以上だとデジタル数字で表すものがあります。

更にマニアックな「進路予告機」もありますが、今回は割愛させて頂きます。

見せ方によって違う分類

先ほどの中継信号機のように、鉄道信号機の中には「赤・青・黄」以外の現示を出す信号機があります。

その見せ方によってジャンル分けがされているので、軽くご紹介します。

色灯式信号機

もっともポピュラーな信号機。「色の違い」によって制限速度を表します。赤・青・黄の組み合わせによってその制限速度が違います。

むか~し使われていたという腕木式信号機も、夜間は赤と青を表示していたのでこの部類に入ると思います。

灯列式信号機

点灯する電球の並び方によって識別される信号機
上記の中継信号機もこの灯列式である。

並び方がタテ・ヨコ・ナナメの組み合わせでその意味が変わるが、信号機によってはヨコ・ナナメのみだったりもする。

ちなみに中継信号機は真ん中の電球が・入換信号機は左側の電球が常に点灯しているので、いちばん球切れがおこりやすいそうです(笑)

最近は信号機にもLED化の波が押し寄せているらしく、どんどんLED式に交換されていってます。
一つの電球だったものが100個くらいのLED集合体に交換され、半分くらい球切れを起こしても視認性は確保されているそうです。

いきなり球切れになる心配が無く、安心ですね!

それぞれの信号機の役割

さて、ここまで様々な信号機をご紹介してきましたが、それぞれの信号機を個別に説明していきます。

ここでは代表的な信号機に限定して紹介します。具体的に言うと、防護区間を持っている信号機です。

防護区間とは、「その信号機の先に列車が進入した場合には、自動的に停止信号を現示して、後続の列車を進入させない区間」のことです。

分かりやすく言うと、列車どうしを衝突させないための区間ですね。
自分で言ってて難しいと思いますので、深く考えないで下さい!

停車場内にある信号機

またマニアックな話ですが、駅=停車場ではありません。

分岐器があって、複数の進路(ルート)を持つ駅のことを停車場といいます。
逆に、分岐器が無くて進路(ルート)が一つしかない駅のことは停留所といいます。

停車場には列車を長時間停車させておいても他のルートで後続列車を通過させたりできますが、停留所では追い抜きができないため、列車を乗り降りのために留めておくことしかできません。

場内信号機

その停車場の入り口にある信号機。正しいルートに線路が向いていれば赤信号以外(=進行を指示する信号)が現示されます。

ルートが2つある場合には、2つの場内信号機が並んでいます。
ちなみに、ルートが3つ以上ある場合には「進路表示器」が付属している場合があります。

ちなみに、大規模な停車場の入り口には場内信号機が2~3ヶ所あり、その場合はホームから遠いほうから「第一場内信号機」、「第二場内信号機」となり、運転士から見るとカウントアップされていきます。

出発信号機

その停車場の出口にある信号機。こちらも正しいルートに線路が向いていれば進行を指示する信号が現示されます。

場内信号機もそうですが、大規模な駅の場合には複数の出発信号機があります。
ホームから近い順に「第一出発信号機」、「第二出発信号機」と続くので、こちらも運転士からはカウントアップとなります。

こちらもルートが2つ以上ある場合には、2つ以上の出発信号機が並んでいます。「進路表示機」が付属しているパターンもありますが、場内信号機に比べて少ないような気がします。

ちなみに、この信号機が青信号の時には、運転士は「出発(信号機)進行(現示)!」と指差歓呼します。
これから「しゅっぱつしんこう!」と叫ぶ際には思い出してください。

入換信号機

停車場の中では、列車を留置線に引き込んだり、逆に留置線からホームのある線路まで据えつけたりする作業があります。

このときに、「目的地の番線までルートが開通していること」と、「ルート上に他の列車が居ないこと」を条件に現示される信号機が入換信号機です。

停車場内だけでなく、駅に隣接する車両基地からホームまでのルートを通る際にも入換信号機が使われたりします。

この信号機は灯列式で、ヨコ2つの点灯が「停止」ナナメ2つの点灯が「進行」です。
最近では誤認防止のため、「停止」の右側の表示灯が赤色になっている場合があります。

ちなみによく似た「入換標識」もありますが、そちらは防護区間を持っていないため今回は割愛します。

誘導信号機

さっき入換「標識」を割愛したばかりですが、こちらは防護区間を持たない「信号機」です・・・
列車どうしが頻繁に連結したり、分離したりする駅に設置されています。

すでに列車の居る線路に、連結のため更に他の列車を進入させるための信号機で、その速度は時速15キロ以下と決められています。

この誘導信号機に進行を指示する信号が現示されると、運転士は時速15キロ以下で、すでに停まっている列車のそばまで運転できます。

本来なら駅員が旗を振って誘導したり、連結作業したりするんですが・・・頻繁に連結する駅だと列車どうしを接近させる「誘導」を、この信号機が代わりにやってくれます。
(連結作業も車掌がやってくれます)

この信号機の点灯が示すのは、「目的地までのルートが正しく出来上がっている」ことのみです。運転士は細心の注意を払って運転しなければなりません。

表示方式は2種類あり、色灯式は無表示→橙色が点灯し、灯列式は無表示→ナナメ2灯が点灯します。

停車場間にある信号機

もしも停車場間に信号がなく、出発/場内信号機しか無かったら・・・?
先発の列車が次の停車場に到着するまでは、後続の列車を発車させられません。

なぜなら、出発信号機から次の停車場の場内信号機までひとつの防護区間(列車どうしを衝突させないための区間)になってしまうからです。

では、停車場間に複数の列車を走らせたい場合にはどうすればいいでしょうか?

答えは、停車場間に「防護区間」を持った信号機を設置することです。

停車場間を信号機によって複数に区切った場合の、区間それぞれを「閉そく」と呼んでいます。
そして「閉そく区間には1列車しか入れない」というルールになっています。

ちなみにA停車場からB停車場の間を3つの閉そく区間に分けた場合は、A駅の出発信号機から順に、第三閉そく→第二閉そく→第一閉そく→B駅場内信号機の順番に並びます。

閉そく信号機

前置きが長くなりましたが、前述の「閉そく区間」の入り口にある信号機が、この「閉そく信号機」です。

この信号機よりも内側(閉そく区間)に列車が進入すると、信号機は停止現示となり、抜けきってしまえば進行を指示する信号に戻ります。

いきなり進行現示になるわけではなく、停止→(警戒)→注意→(減速)→進行の順に徐々に制限速度が緩和されていく感じですね。

具体的には、第三閉そく信号機(A)を例にすると・・・

  • 第三閉そく信号機(A)の内側に列車が進入→(A)は停止現示
  • 第二閉そく内に列車が抜け切る→(A)は注意現示
  • 第一閉そく内に列車が抜け切る→(A)は進行現示

難しいですか?
大丈夫です。あなたが悪いのではなく、カリブの説明が悪いだけなんです。

ちなみに、本来信号機が建てられない停留所には、場内信号機の代わりに「第0閉そく信号機」が建てられている場合があります。

その他の信号機

ここまでは自動信号といって、電気的に制御された、デジタルな信号機を見てきました。
この他にも、実は信号にはアナログな物があります。

手信号

主に信号機が故障して使えない時などに、駅係員が旗を使って出す信号です。
「信号」という名前がついていますが、実際にはただの旗です(笑)

もちろん、信号機の代わりに手信号を使う場合(代用手信号という)には、ちゃんと「次の閉そく区間に列車がいないことを確認」しなければいけません。
具体的には駅係員が次の閉そく信号機まで走って、目視で確認する必要があります。(他にも方法はあるけど割愛!)

ちなみに青旗=注意信号扱いで、赤旗=停止信号扱いです。
45キロ以上の速度で通過してはいけません。

特殊信号

こちらは事故などにより他の列車を緊急に停止させる時に使う信号です。
停止させるための信号のなので、赤色のオンパレードです。

  • 携帯用信号炎管=発炎筒のこと。反対線路の600m先に設置する。
  • 車両用信号炎管=車両の屋根から赤い炎が吹き出る。
  • 特殊信号発光機=当ブログの過去記事参照。
  • 防護無線(発報信号)=付近の列車を一斉停止させる警報音を鳴らすための無線電波を飛ばす。

最後の防護無線に関しては赤くなかったですね・・・

更に他にも「臨時信号機」や「車内信号機」などもありますが、マイナーかつ使用場面が限られているので今回は割愛させて頂きます!

まとめ

カリブの拙い知識と文章力では伝わり切らなかったと思いますが、いかがでしたか?
あまりにも長くなると疲れるので、割愛した部分が多くなってしまいました・・・

鉄道信号機の特徴をざっくりまとめると以下のような感じですね。

  • 列車の脱線転覆と、列車同士の衝突を避けるために設置
  • 主に色や並び方で識別している
  • 駅間には閉そく信号機があり、それ以外は停車にある
  • 主体となる信号機の他に、それに付随する信号機もある
  • 信号機が赤以外のときは、「進路が出来ている」ことと「その先に列車がいないこと」が担保されている(誘導信号機除く)
  • 信号機には「防護区間」があり、駅間には「閉そく区間」もある

どうですか?ザックリしてますか・・・?

語りだすと1回じゃ終わらないほど奥が深い信号機のお話ですが、今回はこのあたりでお開きとさせて頂きます。

あ~、分かりやすく説明するのって難しいなぁ。
お付き合いありがとうございました!

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