カリブ昔の旅~その2~

代行バス TRENDS
糸魚川に到着したバス

昨日に引き続き、8年前の日記を恥ずかしげも無くさらけ出していきます。

もし前回の日記を見ていない方は、「カリブ昔の旅~その1~」を見てからご覧ください。

ひとりスキー開拓!(後編)

大雪で足止め

車内では学生たちがどよめいていた。
携帯電話で親を呼び出す者、家族に帰りが遅くなることを伝える者と様々だ。

しかし俺には呼び出せる親もいなければ、相談する相手もいない。
ていうか今日のホテルまでたどり着けるのかさえ心配だ!

しばらくすると駅係員が乗り込んできて、タクシー代行を出すと説明した。

マジで!?金沢までタクシーで行っちゃうの?と思っていたが、どうやら違うらしい。
この電車の終点である南小谷駅まで送り届けたあと、JR西が用意するバスに乗り換えて欲しい、ということだった。

順番に行き先をメモしている駅員に「どちらまで?」と聞かれて、俺が「金沢です」って答えたときの
「金沢、ですか・・・」って反応したJR東日本の駅員の気持ちがすげぇよく分かる。

吹雪の中の南小谷駅

とりあえずタクシーに乗って南小谷駅を目指す。
運転手含めて6人乗りのタクシーが、豪雪地帯を疾走する!

電車が止まるほどの雪は留まるところを知らず、視界は十数メートルしかない。
しかし雪国で馴らした運ちゃんはスピードを緩めないッ!
ジェットコースターに乗ってるような気分で国道を走る。怖えぇ~。

30分ほどで南小谷駅に到着。もう景色が分からんぐらい吹雪いてたので速攻で駅の中へ。
しばらく待合室のベンチで待っていると、学生らしき子供たちは親が迎えにきて帰っていった。

結局、この駅よりも先まで行きたい面子はどうやら俺を入れて4人らしい。
そして何故か近所の50代のおっちゃんも待合室にいて合計5人。
顔も名前も知らない他人同士だったが妙な連帯感が生まれた。

待合室に缶詰め

バスを待つ俺たちに向けて、南小谷駅の駅員(東日本)が慌ててこう告げた。

「糸魚川からの国道で車同士の事故があって、事故処理と除雪作業が重なってバスが大幅に遅れる」と。

…なんてこった。軽い遭難みたいになってきた。
しかも予想ではあと2時間半くらいはかかる、と言ってきたのだ。
正直言ってこんな場所で、話し相手もいないのに2時間半はキツすぎる。
そう思っていた。

この駅の待合室はとても珍しい構造で、奥のほうに畳の小上がりがあり、そこにコタツが置いてあるのだ。

最初は手前のベンチで座っていたのだが、あと2時間以上も沈黙するわけにはいかず、コタツに入りながらお互いの身の上話に花が咲き始めた。

それぞれの事情

待合室に閉じ込められたのは5名。
俺以外の4人をまとめるとこんな感じ。

男A:70歳の長崎生まれ、富山在住。自営業で旅行が趣味。時刻表と小説を片手に旅するおじいちゃん。松本で一杯呑んでから来たらしい。

男B:50代?地元のおっちゃんで、徒歩30分ぐらいの所から来たが、雪が激しくなってきて駅の待合室で雪をしのいでいた。家の近くにローソンがあるらしい。

女A:20歳。左手薬指に指輪があったので既婚者か。看護師の専門学校を受験するため勉強道具を持参していた。富山県の小杉駅へ帰りたいみたい。

女B:23歳。就職1年目らしい。松本の友人宅へ遊びに行った帰りで、親戚のいる立山へ帰る途中だった。実家は千葉。

このような面々でコタツを囲み、駅員さんが差し入れてくれたミカンやりんご、お茶を頂きながらとりとめのない会話が続いた。

…やっぱ旅はこうでなくちゃ。「旅は道連れ、世は情け」だよな!

女Aとスキーの話をしたり、女Bがおみやげ用に買っていた石焼き芋を振舞ってくれたりしてすっかり打ち解けた。

男Aの旅行話や男Bの地元トーク、そんな話をしているうちにあっという間に2時間半が経った。

雪原からの脱出

JR西がチャーターしたバスには、JR西の社員とバス運転手が乗っていた。
ここまで辿り着くのに4時間半かかった、と言っていた。マジで頭が下がる思いがした。

そして俺たち5人と係員2人を乗せたバスは、交互通行の始まった国道を走り出した。
途中男Bの家の近くのローソンで彼を下ろし、バスは山道の中へ。
この頃には疲労がピークに達したため、バスの中でウトウトと眠ってしまった。

1時間半ほど眠っただろうか。バスはようやく糸魚川駅に着いた。
今朝コンビニでお金を下ろしたあの糸魚川駅だ。

既に金沢までの最終電車であるサンダーバード号の発車時刻を少し過ぎていた。

しかし、サンダーバード号の方も大雪で15分ほど遅れていたらしく、
すぐに到着するという情報を駅員さんからもらった。
ギリギリセーフである。

そして糸魚川の駅員さんが用意してくれていたのが、なんとおにぎりとお茶。
「きっとお腹が空いているでしょうから」と、人数分用意してくれていたのである。

正直ソースカツ丼とミカン、りんご、焼き芋を食っていたのでそんなに空いてはいなかったのだが、
その心意気だけで胸がいっぱいになった。

一期一会と感謝の気持ち

特急の自由席に乗り込み、俺はドア付近の席へ。残りの皆は奥の方へ座っていた。
途中の魚津や富山で降りる面々が、ドア付近の俺へ会釈や挨拶をしてくれた。

なんだか不思議な仲間意識を感じたこの面々とも、もう一生会わないんだろうなぁ。
一期一会という言葉の意味を、久々に感じる場面であった。

そして0時19分、列車は金沢駅に到着した。
ビジネスホテルだったのでチェックインも普通に済ませ、自室のベッドへ倒れこむ。

…今日はなんて長い一日だったんだろう。
前半は孤独や寂しさを感じ、後半は絆や暖かさを感じる。
ある意味バランスの取れた一日だった。

「俺が今の職場で同じような目に遭った人に対して、あそこまで誠意を尽くせるだろうか?」

そんな自問を考えながら、差し入れのおにぎりを食べた。

涙の味がした。

補足説明

というわけで、今回は初めて過去の日記を引っ張ってきてブログにしてみました。

拙い文章ですみませんでした。
そしてお目汚し失礼いたしました!

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